【最新研究】肥満治療、薬か?手術か?10年で見えた明暗
- 四谷メディカルキューブ

- 9月30日
- 読了時間: 3分

近年、「GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)」という注射薬がテレビやネットで話題になっています。血糖を下げるだけでなく、体重を減らす効果もあるため、ダイエットの切り札として注目されてきました。
一方で、昔から「減量手術(胃を小さくする手術)」は、肥満治療の最も強力な方法とされてきました。では実際のところ、「薬」と「手術」、どちらが長い目で見て健康に良いのでしょうか?
アメリカのクリーブランドクリニックが発表した最新の大規模研究(Nature Medicine誌 2025年9月16日掲載)が、この疑問に答えています。
研究の内容
対象となったのは、平均BMI 41超の肥満をもつ2型糖尿病の患者さん約4,000人です。
手術グループ(胃バイパス術やスリーブ手術を受けた人)
薬グループ(GLP-1RAを使った人)
この2つを比較して、10年間での死亡率や心臓・血管・腎臓・目の病気にどう違いが出るかを調べました。
結果は手術が明らかに優位
■死亡率
薬グループ:12.4%
手術グループ:9.0%
■心臓や血管の病気
薬グループ:34.0%
手術グループ:23.7%
腎臓や目の合併症も、手術のほうがリスクを大きく下げていました。
つまり、薬を使うよりも手術を受けた方が、命や健康を守れる可能性が高いという結果でした。
なぜこんなに差が出るの?
研究チームは理由の一つを「体重減少の大きさ」と考えています。
薬グループの平均体重減少は約7%
手術グループでは約22%
つまり、「しっかり体重を減らせるかどうか」が、その後の健康に大きく影響するのです。さらに、手術には「腸の仕組みが変わることでホルモンや代謝が改善する」という、薬にはない効果もあるとされています。
他の研究でも同じ結論
今回の結果は特別なものではなく、イスラエルなどで行われた研究でも同様に「長期的には手術が優れている」と報告されています。
一般の人へのメッセージ
薬(GLP-1RA)は確かに強力で、特に最近の「チルゼパチド」などは効果も大きくなっています。
しかし現時点では、肥満に伴う命や合併症リスクを大きく減らすには、手術の方が有利です。
「薬でどこまで行けるのか?」「手術にしかできないことは何か?」──これは今後の大きなテーマです。
まとめ
GLP-1RAは話題だが、10年成績では手術が明らかに優位。
大幅な体重減少が、健康寿命を延ばすカギ。
将来、新しい薬で「手術に匹敵する効果」が得られるかどうかに注目。
この記事を書いた人
■四谷メディカルキューブ 減量・糖尿病外科センター
四谷メディカルキューブ 減量・糖尿病外科センターでは、高度肥満症の方を対象とした減量手術を行っています。減量手術において国内屈指の執刀経験を有しており、論文、学会発表、講演、メディア出演など、多岐にわたる活動を展開しています。





