GLP-1

GLP-1製剤で失明することがある?注目されている目の病気「NAION」について

東京都千代田区の四谷メディカルキューブ 減量・糖尿病外科センターです。当院では、減量手術に関する治療やご相談を受け付けています。

近年、肥満症や糖尿病の治療において、GLP-1製剤が広く使用されるようになりました。ウゴービ、オゼンピック、マンジャロ、ゼップバウンドなどの名前を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。これらの薬剤は、食欲を抑え、体重を減少させる効果が高く、肥満症治療に大きな進歩をもたらしました。

一方で、最近、GLP-1製剤の使用と、まれではあるものの視力低下や失明につながる可能性のある目の病気との関連が報告され、注目を集めています。その病気は、「非動脈炎性前部虚血性視神経症(NAION:ナイオン)」と呼ばれるものです。

今回は、GLP-1製剤とNAIONの関係について、現在分かっていることを分かりやすく解説します。

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NAION(ナイオン)とは、どのような病気?

私たちの目は、網膜で受け取った光の情報を「視神経」を通して脳に伝えることで、ものを見ることができます。NAIONは、この視神経の一部に十分な血液が届かなくなることで、視神経が障害され、急激に視力が低下する病気です。

主な症状は以下のとおりです。

  • 突然、片方の目が見えにくくなる
  • 視野の一部が欠ける
  • 朝起きたときに視力の異常に気づく
  • 痛みを伴わないことが多い

NAIONの怖いところは、一度障害された視神経の機能が十分に回復せず、視力障害が残ってしまう場合があることです。

なお、NAIONはGLP-1製剤を使用していない方にも起こる病気です。糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸症候群などが発症に関係することが知られています。

GLP-1製剤とNAIONには、本当に関係があるの?

この問題が注目されるきっかけとなったのは、2024年に米国の医学雑誌『JAMA Ophthalmology』に発表された研究です。この研究では、糖尿病や肥満症に対してセマグルチドという薬剤を使用していた患者さんで、NAIONの発症が多い可能性が報告されました。

その後、世界各国で大規模な調査が行われました。研究結果には多少のばらつきがあるものの、セマグルチドの使用とNAIONの発症には関連があることを示すデータが蓄積されてきました。

そして2025年6月、欧州医薬品庁(EMA)は、さまざまな研究結果を検討したうえで、セマグルチドによるNAIONを「非常にまれな副作用」と位置づけました。セマグルチドは、ウゴービ、オゼンピック、リベルサスなどに含まれる成分です。

ただし、GLP-1製剤には複数の種類があり、すべての薬剤について同じ程度の危険性が証明されているわけではありません。

実際、どれくらいの確率で起こるの?

ここが、患者さんに最も知っていただきたいポイントです。欧州医薬品庁によると、セマグルチドを使用している2型糖尿病患者さんでは、使用していない方と比較して、NAIONの発症リスクが約2倍になる可能性があります。

「2倍」と聞くと、とても怖く感じられるかもしれません。しかし、もともとNAION自体が非常にまれな病気です。

研究データによると、セマグルチド使用に伴う発症の増加は、1万人が1年間使用した場合に、約1人増える程度と推定されています。つまり、リスクが増える可能性はありますが、実際に発症する方はごく少数です。

また、これらの数字は主に2型糖尿病患者さんを対象とした研究から得られたものです。糖尿病のない肥満症患者さんでも同じ確率で起こるかどうかは、まだ十分に分かっていません。

マンジャロやゼップバウンドは大丈夫?

現在、日本で肥満症治療に使用されている代表的な注射薬には、次のようなものがあります。

  • ウゴービ:セマグルチド
  • ゼップバウンド:チルゼパチド
  • オゼンピック:セマグルチド(糖尿病治療薬)
  • マンジャロ:チルゼパチド(糖尿病治療薬)

セマグルチドとチルゼパチドは、似た作用を持ちますが、異なる成分です。チルゼパチドはGLP-1だけでなく、GIPという別のホルモンにも作用する薬剤です。

現在、NAIONとの関連について、より多くの研究データが蓄積されているのはセマグルチドです。一方、マンジャロやゼップバウンドに含まれるチルゼパチドについては、NAIONの発症リスクが増加するかどうか、まだ結論が出ていません。

2026年9月には、日本でもマンジャロやゼップバウンドの添付文書に、NAIONのリスク増加を示唆する研究結果があることが追記されました。ただし、これは薬剤がNAIONの原因であると確定したことを意味するものではありません。今後、さらなる研究が必要とされています。

どのような人が注意すべき?

NAIONは、もともと次のような方で発症しやすいことが知られています。

  • 糖尿病のある方
  • 高血圧のある方
  • 睡眠時無呼吸症候群のある方
  • 過去にNAIONを発症したことがある方
  • 視神経の構造上、NAIONを起こしやすい特徴を持つ方

特に、肥満症の患者さんでは、糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸症候群などを合併していることが少なくありません。こうした背景も踏まえて、治療を選択する必要があります。

ただし、これらの病気があるからといって、必ずしもGLP-1製剤を使用できないわけではありません。主治医と相談し、治療によって得られるメリットと、考えられるリスクを比較することが重要です。

薬を使っていて、目に異常を感じたら?

GLP-1製剤を使用している方で、
「突然、片方の目が見えにくくなった」
「視野の一部が欠けている」
「急に視力が低下した」
といった症状が現れた場合には、様子を見ず、速やかに眼科を受診してください。夜間や休日であれば、救急外来での診察が必要になることもあります。

NAION以外にも、急激な視力低下を引き起こす緊急性の高い病気があるためです。また、GLP-1製剤を使用していることを、眼科医に必ず伝えてください。

セマグルチドを使用中にNAIONと診断された場合には、欧州医薬品庁は薬剤の中止を推奨しています。一方、目の症状がない方が、今回の報告を理由に自己判断で薬を中止する必要はありません。

特に糖尿病治療中の方は、急に薬をやめることで血糖コントロールが悪化する可能性があります。心配な場合には、まず主治医に相談しましょう。

それでもGLP-1製剤は有用な治療薬なの?

GLP-1製剤は、肥満症治療に大きな変化をもたらした薬剤です。大幅な体重減少に加え、薬剤や患者さんの状態によっては、糖尿病の改善、心血管疾患のリスク低下など、体重減少だけにとどまらない健康上のメリットも期待できます。

今回のNAIONに関する報告は、こうした薬剤の有用性を否定するものではありません。大切なのは、薬にはメリットとリスクの両方があることを理解し、正しく使用することです。

また、肥満症の治療には、食事療法や運動療法、薬物療法のほか、減量・代謝改善手術という選択肢もあります。患者さんの肥満の程度、合併症、これまでの治療経過などを総合的に評価し、一人ひとりに適した治療方法を選択することが重要です。

まとめ

GLP-1製剤と目の病気「NAION」について、現在分かっていることをまとめます。

  1. GLP-1製剤の一つであるセマグルチドと、NAIONの発症との関連が報告されています。
  2. 欧州では、セマグルチドによるNAIONが「非常にまれな副作用」と認められています。
  3. 発症リスクは増加する可能性がありますが、実際に発症する方はごく少数です。
  4. マンジャロやゼップバウンドについては、現時点で因果関係が明らかになっていません。
  5. 突然の視力低下や視野の異常を感じた場合には、速やかに眼科を受診することが重要です。

GLP-1製剤は優れた治療効果を持つ一方、決してリスクのない薬ではありません。新しい副作用に関する情報を正しく理解し、必要以上に怖がることなく、医師と相談しながら安全に治療を続けていただきたいと思います。

本記事は2026年10月時点の医学的知見をもとに作成しています。今後の研究や規制当局の判断によって、内容が更新される可能性があります。

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