胃を細長い形に整え、食事量と食欲に働きかける手術です。体重を減らし、肥満に伴う健康障害の改善を目指します。世界的に最も多く行われている減量手術の術式です。

どのような手術ですか?

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は、胃の外側(大弯側)を切除し、残った胃を袖(スリーブ)のように細長くする減量・代謝改善手術です。一般に胃のおよそ80%を切除します。[1]

「腹腔鏡下」とは、どのような方法ですか?

全身麻酔のもと、お腹に数か所の小さな切開をおき、腹腔鏡(先端にカメラを備えた細い器具)と手術器具を入れて行う方法です。炭酸ガスでお腹の中に作業する空間をつくり、術者はモニターに映し出された映像を見ながら、胃の切除・閉鎖を行います。

1 小さな傷から、カメラと器具を入れます

お腹を大きく開く代わりに、小さな切開から手術を進めます。傷は通常は1cmの傷が2ヶ所、1.5cmの傷が1ヶ所、5mmの傷が2ヶ所の計5ヶ所でおこないます。体格や手術の状況により異なります。

2 映像を見ながら、胃を細長く形成します

専用の器具で胃の外側を機械で切除し、残す胃の切離部を、最も安全な方法である手縫いで縫合閉鎖します。食道から胃、十二指腸、小腸へと続く食べ物の通り道は保たれ、小腸のバイパスは行いません。

3 安全性を確認して手術を終えます

出血や胃の開通性などを胃内視鏡を用いて確認します。切除した胃を1.5cmの傷から取り出します。

痛み止めの注射や癒着防止などを行い終了します。

傷が小さいことによるメリット

開腹手術と比べて傷や術後の痛みが小さく、回復が早い傾向があります。ただし、お腹の中では胃を切除する手術を行うため、出血や縫合不全などのリスクがなくなるわけではありませんが、減量手術では腹腔鏡下手術は開腹手術より合併症が少なくなります。[1]

日本での導入と保険適用の歩み

2005年:日本で初めて施行

当センター長の笠間和典医師が、2005年に日本で初めて腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を行いました。[5]

2014年4月:保険適用開始

腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は、2014年4月から公的医療保険の適用となりました。現在は、定められた適応条件を満たす患者さまが、施設基準を満たす医療機関で保険診療として受けられます。[6]

食事量と食欲の両方に働きかけます

胃が小さくなることで、少ない食事量でも満腹感を得やすくなります。また、食欲に関係するホルモンなどにも変化が起こります。手術後も食事内容や食べ方を整えることが大切です。

切除した胃は元に戻せません。

効果だけでなく、合併症や術後の生活についても理解したうえで治療を選びます。

期待できる効果

この手術の目的は、体重を減らすことに加え、肥満に伴う健康障害や日常生活の負担を軽くすることです。効果の大きさは、手術前の体重、合併する病気、術後の生活などによって異なります。

1.体重の減少:手術前の体重から、どれくらい減る?

減量効果は「総体重減少率(%TWL)」で表すことがあります。これは、手術前の体重の何%が減ったかを示す数値です。

例:体重100kgの方が75kgになった場合

25kgの減量で、総体重減少率は25%です。
計算式:(手術前の体重 − 現在の体重)÷ 手術前の体重 × 100
※計算方法を示す例であり、個人の治療結果を予測するものではありません。

日本人を対象とした多施設研究

国内9施設の調査では、減量・代謝改善手術を受けた831例のうち、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は501例でした。以下は、このLSG群の成績です。[7]

術後の時期総体重減少率評価症例数
1年29%447例
3年28%183例
5年26%57例

術後5年でも、評価できた患者さまでは平均26%の体重減少が報告されています。ただし、時点ごとに評価できた人数が異なり、501例全員を5年間追跡した結果ではありません。過去の観察研究であり、当院単独の成績や個人の減量予測を示すものではありません。

海外の研究で報告された長期体重減少率[3]

23.4%

SLEEVEPASS試験術後10年

一般に術後早期から体重が減り、その後は減り方が緩やかになります。長期的に減量が維持される方がいる一方、ある程度の体重再増加や減量不足が生じることもあります。体重の変化を確認しながら、栄養と筋肉を保つことも大切です。

2.2型糖尿病:血糖値の改善や薬の減量

体重減少や代謝の変化によって、血糖値の改善、糖尿病治療薬やインスリンの減量・中止につながることがあります。薬を使わずに血糖値が一定の基準を満たす「寛解」に至る方もいます。

同じ国内多施設研究のLSG群では、術後3年の糖尿病の完全寛解・部分寛解を合わせた寛解率は85%(55/65例)でした。内訳は完全寛解50例、部分寛解5例です。高血圧の寛解率は66%(64/97例)、脂質異常症の寛解率は63%(59/94例)でした。 [7]

この研究の糖尿病完全寛解は「糖尿病の薬を使わず、空腹時血糖100mg/dL未満かつHbA1c 6.0%未満」、部分寛解は「薬を使わず、空腹時血糖100~125mg/dLかつHbA1c 6.0~6.4%」と定義されています。現在の一般的な寛解の定義や他の研究と同一とは限りません。寛解後も再発することがあり、通院と検査を続けます。

糖尿病の罹病期間、インスリン分泌能、治療内容などで結果は異なります。

3.肥満に伴う健康障害の改善

健康障害期待される変化と確認すること
高血圧血圧が下がり、降圧薬を減らせることがあります。家庭血圧などをもとに調整します。
脂質異常症中性脂肪やコレステロールなどの改善が期待できます。採血で確認し、薬の必要性を判断します。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群無呼吸や日中の眠気などが改善する可能性があります。CPAPをやめられる可能性があります。体重が減っても無呼吸が残る場合があり、CPAPの中止には再評価が必要です。
日常生活の負担体が動かしやすくなる、膝の痛みがすくなくなる、歩行や運動がしやすくなるなど、生活の質の向上が期待できます。
生命予後の改善肥満に関わる病気が改善して長生きできる可能性があります。
費用対効果いろいろな薬や治療が不要となり、医療費の低下が期待できます。

これらの改善はすべての方に生じるものではありません。病気ごとの効果や「改善」「寛解」の定義は研究によって異なります。[2] [3]

4.効果を長く保つために

定期通院、食事の調整、筋肉を保つ運動を続けます。体重再増加や減量不足がある場合は、食事・運動・心理面の支援に加え、薬物治療や追加手術などを個別に検討します。困ったときは早めに診療チームへ相談してください。

薬やCPAPは自己判断で中止しないでください。

術後は薬の必要量が変わる場合があります。糖尿病の薬、降圧薬、脂質異常症の薬やCPAPの減量・中止は、検査結果をもとに担当医が判断します。

手術の対象と、術式の選び方

食事療法、運動療法、薬物治療などで十分な効果が得られず、肥満に伴う健康障害がある方で、手術を検討します。BMIだけでなく、合併する病気、これまでの治療、術後の通院や生活の見通しを総合的に評価します。

2014年4月に保険適用となった本術式の保険診療には、BMI、合併する病気、6か月以上の内科的治療歴などの要件があります。詳しい条件は、当サイトの保険適用ページをご確認ください。

スリーブ・バイパス術との違い

術式の主な違い

術式特徴
スリーブ状胃切除術胃を細長く形成します。小腸のバイパスは行いません。
スリーブ・バイパス術胃の形成に小腸のバイパスを加えます。減量・血糖改善効果の上乗せが期待される一方、栄養管理などにより注意が必要です。糖尿病がないと保険適用となりません。

強い胃食道逆流症がある場合や、より大きな代謝改善効果が必要な場合などは、別の術式も含めて検討します。ご自身に適した方法を担当医と相談して決めます。

知っておきたいリスクと注意点

腹腔鏡手術でも、合併症のリスクはあります。重症化した場合、内視鏡治療や再手術、集中治療、長期入院が必要になることがあり、まれに生命に関わります。[4]

出血・縫合不全胃を切離・閉鎖した部分からの出血や漏れが起こることがあります。漏れにより腹膜炎や膿瘍を生じることがあります。
血栓・肺塞栓、感染症血のかたまりが肺の血管を詰まらせることや、創部・腹腔内の感染、肺炎などが起こることがあります。
胃食道逆流・狭窄胸やけや逆流が新たに生じる、または悪化することがあります。胃の狭窄やねじれにより、食べ物が通りにくくなることもあります。
栄養不足・貧血・胆石たんぱく質、鉄、ビタミンなどの不足による貧血、急な減量に伴う胆石が生じる可能性があります。外来フォローアップが重要です。

手術前後の生活とサポート

ご自身に合う治療を、一緒に考えます。

これまでの治療や健康状態を確認し、手術以外の選択肢も含めてご説明します。手術を受けるか迷っている段階でもご相談ください。

参考資料

1. NIDDK:Types of Weight-loss Surgery
https://www.niddk.nih.gov/health-information/weight-management/bariatric-surgery/types

2. NIDDK:Weight-loss Surgery Benefits
https://www.niddk.nih.gov/health-information/weight-management/bariatric-surgery/benefits

3. Salminen P, et al. SLEEVEPASS 10-year follow-up. JAMA Surg. 2022;157:656–666.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35731535/

4. NIDDK:Weight-loss Surgery Side Effects
https://www.niddk.nih.gov/health-information/weight-management/bariatric-surgery/side-effects

5. Kasama K, Tagaya N, Kanahira E, et al. Has laparoscopic bariatric surgery been accepted in Japan? The experience of a single surgeon. Obes Surg. 2008 Nov;18(11):1473–1478. doi:10.1007/s11695-008-9492-0.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18398667/

6. 四谷メディカルキューブ:減量・代謝改善手術の保険診療に関するお知らせ(2024年4月1日)
https://www.mcube.jp/news/20240401_2.html

7. Haruta H, Kasama K, Ohta M, et al. Long-Term Outcomes of Bariatric and Metabolic Surgery in Japan: Results of a Multi-Institutional Survey. Obes Surg. 2017 Mar;27(3):754–762. doi:10.1007/s11695-016-2361-3.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27631329/

本ページは一般的な治療説明です。実際の適応・治療計画は診察と検査をもとに個別に判断します。掲載資料確認日:2026年10月20日。