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減量外科の歴史


Chapter 8 特別寄稿「日本の減量外科の歴史」
下都賀総合病院 院長 川村功 先生



 「肥満は栄養摂取過多による栄養障害であり、栄養失調に劣らない深刻な病態である。」
1979年にハーバード大学のGeorge Blackburn教授が私に言ったことが日本の肥満外科のはじまりになったといっても過言ではない。Blackburn教授は当時外科栄養法の第一人者であり、私は1979年から81年まで彼の元で学んでいた。彼の外科医としての仕事の多くは肥満患者に対する診療であり、その中心が肥満外科手術であった。

1981年千葉大学第二外科に戻ると、恩師の故佐藤博教授より日本における肥満外科のスタートを命じられた。当時Blackburn教授だけでなく、多くの米国における肥満手術はGastric Bypass(胃バイパス術)であったので私達もこの術式を採用した。しかしながら、当時日本においては胃癌の発生率が高く、術式についての再検討が必要となった。肥満外科の父とされるアイオワ大学外科教授Edward Mason氏が提唱したVertical Banded Gastroplasty(VBG、垂直遮断胃形成術)がその頃急速に広まっていたので、私は先生に直接その手術の指導を受けたうえで、1984年からはこの術式に転向をした。1986年、「重症肥満の外科手術」の項目で高度先進医療として認可され、当時千葉大学附属病院がその施設認定を受けた。1988年にはVBGをはじめとする「胃縮小術」が社会保険診療対象疾患として収載され、現在に至っている。

1991年米国NIH(National Institute of Health)が重症肥満に対して外科治療法を推奨する声明を発表した後、肥満患者の急増に伴い肥満外科手術症例数も世界で広く行われるようになった。とくに肥満の程度が著しい患者がより増加してきたため、肥満の外科治療の必要性が年々増加してきた。しかし、BMI≧50の症例も珍しくなくなると、胃縮小術のみで対応することが困難な症例も見られるようになり、Malabsorption Surgical Procedure(消化吸収能力減弱手術)が改めて見直され、胃縮小効果とともに取り入れられる術式が主流になってきた。具体的な術式名としては、Extended Roux-Y Gastric Bypass(拡大胃バイパス術)、Bilio-pancreatic Diversion(胆膵バイパス術)、Sleeve Gastrectomy+Duodenal Switch(袖型胃切除術+十二指腸転換術)等が挙げられる。

特筆すべきは、肥満外科手術の領域に1990年代半ばより腹腔鏡下手術が導入されたことである。その手術器具の進歩・発展はめざましく、内視鏡外科医の手術の技術向上と相まって、爆発的に腹腔鏡下による肥満外科手術が全世界に広まってきた。実際多くの手術の中で、最も腹腔鏡下手術の恩恵を受けているのは、肥満外科ではないかと思われるほどである。現在世界で年間20万例以上の肥満外科手術が行われていると推定されるが、その60%以上が腹腔鏡下手術により行われている。日本においても2000年から腹腔鏡下肥満手術が採用され、2002年からは笠間和典医師らの積極的な活動を中心に、大きな展開がされている。
今後世界でやや立ち遅れた感のある日本においても、日本肥満学会、日本肥満外科研究会、肥満・栄養障害研究会、日本内視鏡外科学会などのメンバーを中心にわが国でもこの領域の大きな発展がみられるものと思われる。

※この「日本の減量外科の歴史」は日本の減量外科・肥満外科の先駆者であり、下都賀総合病院の院長である川村功先生より寄稿いただきました。


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