BILIOPANCREATIC DIVERSION
(胆膵路変更手術:適切な日本語訳がありませんのでBPDと記載します)
イタリアのスコピナーロ教授が、以前行われていたJIB(空腸回腸バイパス術)という手術を改善して、安全な栄養吸収を制限する手術として1970年代後半より施行しだした。そのためこの手術はスコピナーロ手術とも呼ばれている。JIBでは細菌の繁殖のよっておこっていた多くの合併症(盲管症候群)をこの手術ではなくし、コントロールされた栄養吸収制限を作り出すことに成功した。
栄養吸収を制限することは、カロリーと栄養の不完全な吸収と定義される。その原理は以下のようである。@ 胆汁と膵液が十二指腸に排出されるが、この手術では胆汁と膵液は空腸で食物と混ざるようになる。しかし空腸では胆汁、膵液により分解された食物の吸収が低下する。また、胆汁などが混ざらない部位での食物の通過は分解酵素がないため少量しか吸収されない。とくに胆汁酸とリパーゼは脂肪の吸収に必要であるので、脂肪カロリーの吸収抑制が他の栄養素に比して多く起こる。しかし、残念なことに吸収されない脂肪はガスや下痢、くさい便を引き起こす。A 食物がとおる小腸が短くなるため、食物が直接触れる小腸粘膜の面積が少なくなる。そのため栄養の吸収が少なくなる。
胃バイパス術は胃をバイパスするだけで切除をしないがBPDでは胃の70%を切除する。これは胃から産生される酸を減らすために行われる。胃の前庭部(胃の出口側)にあるG細胞から産生されるガストリンというホルモンが胃の上部を刺激して胃酸を産生させる。この手術ではこのしてある胃の大きさは胃バイパス術での胃嚢(パウチ)の大きさよりも大きくなる。このため食事摂取を制限する手術よりも多く食べられる。食物が胃に入ったあと、新たに作られた吻合部通過して、小腸(栄養脚)に流れる。この構造は基本的には胃バイパス術と同じであるが、胃から大腸までの小腸の長さがかなり短くなっていて、栄養吸収を障害するようになっている。膵液と胆汁は胆膵脚を流れ、大腸から50~100cmの部位の栄養脚に流れるようにする。胆汁、膵液と食物が混ざり流れていく小腸の部分は共通脚と呼ばれる。この栄養脚、共通脚の長さは外科医によって違いが出てくる。
BPD術後の超過多重減少率は約70%といわれている。そしてこの減量は少なくとも18年間は続くであろうことは証明されている。しかしながら、他の手術のデータ同様、このデータもフォローアップの長さや質、手術が行われた国、外科医、患者さんの術前の体重によって変わってきている。他の減量手術同様、BPDも生涯にわたるフォローアップが必要である。
DUODENAL SWITCH
DS(Duodenal Switch:十二指腸変更、交換=適当な日本語訳が見つかりません。ここではDSと表記します。)は、BPDの変法であり、術後の潰瘍発生の低下、食事摂取制限の追加、ダンピング症候群の発生の減少、蛋白カロリーの吸収制限による栄養障害などをへらすために考え出された。しかし、ダンピングに関しては一概に“悪い” とは言えない合併症であり、ダンピングによって患者さんが高糖質や高脂肪食をとることを抑えているとも考えられている。BPD/DSは1986年にHess医師により報告された。
BPD/DSは栄養吸収を抑えることと同時に、食事摂取を抑えることで機能する。残った胃はバナナのような形となり、十二指腸の上部で切断されて、そこで小腸と吻合される。BPDと比べて、DSはより小さな胃となる。BPDとBPD/DSの大きな違いは、残った胃の形である。栄養吸収抑制をつかさどる部分は大きな違いはなく、BPDでは胃の下半分を横に切り取り、BPD/DSでは胃の大弯側を縦に切り取る。(袖状胃切除術と同じ形になる) |
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十二指腸は小腸よりも胃酸への耐性が高いため、潰瘍になりづらいといわれてる。BPDは胃と小腸をつなぐが、DSは十二指腸と小腸を吻合する。DSは胃から2-4cmの部分の十二指腸で切断して、小腸と胃側の十二指腸の断端を吻合する。理論的にはDSはBPDと比べ鉄とカルシウムの吸収が良くなると考えられている。十二指腸を切断するデメリットは、同部分には多くの大事な器官が集中しており、これらの器官を損傷すると命にかかわるような合併症が生じる可能性があるということである。
これらの手術は、長期間の最も多くの体重減少が報告されている。しかし胃バイパス術や食事摂取を制限するだけの手術に比べて、栄養障害が生じる率が高くなる。BPDとBPD/DSは減量外科手術の中でも最も複雑な手術であると考えられる。しかしながら、ほかの手術同様、この手術も施設間での差が見られる。 |
ある患者さんたちや外科医たちはDSがダンピング症候群がないため、胃バイパス術やBPDよりも優れた手術であると考えている。しかしBPDやDSは、脂肪に富んだ食事の後は、とてもくさいおならや下痢になるという、これらの手術に特徴的な副作用がある。
Advantages of BPD and DS:
(BPDとBPD/DSの利点)
胃バイパス術やバンドに比べて、食事摂取量が多い
食べられない食質が少ない
長期間のより多い体重減少が期待できる
バンドと比べて早い体重減少がおこる。
Complications of BPD and DS:
(BPDとBPD/DSの合併症)
下痢とくさいのガス、平均一日に3-4回の軟便がある。
脂溶性ビタミン(ビタミンA,D,E,K)の吸収障害
ビタミンA欠乏は夜盲、ビタミンD欠乏は骨粗しょう症を起こす。
鉄欠乏が胃バイパス術と同程度の頻度でおこる。
蛋白カロリーの吸収障害による栄養障害:共通脚の長さを変更する再手術が必要になることもある
潰瘍(DSでは少なくなる)
ダンピング症候群(DSでは少なくなる)
Summary
(サマリー)
BPDもBPD/DSも腹腔鏡下に行うことが出来る。しかし、これらの手術は腹腔鏡下胃バイパス術よりも高い技術を要するといわれており、もっとも経験のある外科医によって行われるべきである。長期間のフォローアップと毎日のビタミンサプリメントの摂取がこれらの手術の成功には不可欠である。バイパス同様に生涯にわたるフォローアップが、栄養やミネラルの欠乏を防ぐために必要となる。
【参考文献】
■Biliopancreatic diversion and duodenal switch
Scopinaro, N., Gianetta, E, et al. Biliopancreatic diversion for obesity at eighteen years. Surgery 1996;119:261-8.
Hess DS, Hess DW. Biliopancreatic diversion with a duodenal switch. Obes Surg 1998;8:267-82.
Marceau P, Hould FS, Simard S, et al. Biliopancreatic diversion with duodenal switch. World J Surg. 1998;22:947-54.
※この「減量外科の歴史」は米国肥満外科学会 American Society for Bariatric Surgery (ASBS) のサイトに掲載されているStory for Surgery for Obesity をASBSの了解を得て翻訳し,減量手術.comに掲載しております。
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