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術後の栄養管理


術後の栄養管理


【胃バイパス術】
  この胃バイパス術とは、『食事摂取量を制限する手術』と『消化吸収を少なくさせる手術』を組み合わせることによって、より効果的に体重減少をはかるものです。つまり、胃の容量を通常の1500ccから20ccに縮小することで、少量の摂取で満足感をえて、食事摂取量を制限出来、吸収を悪くすることによりエネルギーの取り込みをさらに少なくします。今まで、さまざまなダイエットを繰り返してきたみなさんにとって、一番怖いリバウンドが起こりにくい手術だと言われています。

 しかし、手術をすれば簡単に減量できると思ったら大間違いです!!たくさんの変化が身体の中で起こるわけですから、あなた自身がしっかり食事に関して注意をしていかなければ、ただの栄養失調になるだけです。

成功の鍵はあなた自身がにぎっています。術後の変化をしっかり理解し、健康的な身体と共に正しい食生活への一歩を踏み出しましょう!!


術後の食生活のポイント


  • 胃の容量が20ccに縮小するので、食べ方の工夫が必要
    • 食べ物の種類を初めのうちは制限し、流動食から徐々に固形物へ移行していく
    • 術後の食事のスケジュール
      • ステージT:術後翌日からスタート
      • ステージU:術後15日目からスタート
      • ステージV:術後1ヶ月後からスタート
    • 少量ずつ(スプーン1杯ずつ…)ゆっくり飲む(食べる)習慣を身につける
    • 1口飲んだら3分程度休む
    • 1回量を少なくし、食事回数を5〜6回に増やす
  • 栄養不良を起こす可能性が大きいので不足しがちな栄養素の摂取を心掛ける
    • 水分は1日2000ccを目標にしっかり摂取する
    • 鉄・ビタミン・カルシウムなどのサプリメントをしっかり摂取する
    • タンパク質をしっかり摂取する
  • ダンピング症候群を起こさないように注意する
    • 食事時間は30分〜40分かけて、ゆっくりよく噛んで食べる
    • 食後の高血糖を抑える為、砂糖含量の多いものは控える

ダンピング症候群とは・・・


  胃は通常、食べた物をためておいて、粥状にしてから少しずつ小腸に送り込みますが、術後は胃が小さくなるため、食べた物をためておく力が低下するばかりか、胃酸の分泌も少なくなるので、消化する働きが低下してしまいます。

そのため、胃の運動がうまく行かず、食べた物が粥状にならないまま、小腸に流れてしまうと、この『ダンピング症候群』を起してしまうのです。『ダンピング』とは、「物がどさっと流れる」、あるいは「投げ売り」という意味からきています!!

 症状としては、冷や汗・動悸・めまい・全身倦怠感・顔面紅潮などがあります。

 ダンピング症候群には、早期ダンピング症候群と後期ダンピング症候群があります。

早期ダンピング症候群

  • 食後30分以内に起こる
  • 食べ物が胃から小腸に急速に流入することによる。
  • 食べ物が急速に流れ込むと、胃腸が急に拡張したり動き出したりするので、 懸命に働こうとする小腸に血液が集まり、体全体の血液の配分が変化してしまいます。この状態を立て直そうとする反応も絡んで起こるのが、早期ダンピング症候群です。
  • 起こさないようにするには…
    • ゆっくりよく噛んで食べる!!
    • 固形物を流動物で流し込まない!!
    • 繰り返し起こってしまう時は、薬物療法
  • 起きてしまったら…
    • まずは横になって休む

後期ダンピング症候群

  • 食後2〜3時間後に起こる
  • 食事直後の高インスリン血症により二次的に低血糖を起こす
  • 食べ物が早く流れ込むため、血糖値が正常な人より急激に上がる場合があります。このため、血糖値を下げようとインスリンが過剰に分泌されて、低血糖状態になってしまいます。
  • 起こさないようにするには…
    • ゆっくりよく噛んで食べる!!
    • 食後高血糖を起こしやすい砂糖含量の多いものの摂取を控える
  • 起きてしまったら…
    • 砂糖湯やガムシロップなどの糖質を摂取する

栄養不良障害とは・・・


   栄養不良障害としては以下のような症状が現れます。
  • 脱水
  • 貧血
  • 脱毛
  • 筋肉減少

脱水

  水は体内に最も多く含まれる成分で、栄養素の運搬や体温の維持などに役立っていて、酸素と共に生命維持のために不可欠なものです。

体重の1%の水分が失われると、のどがかわき、不足を補うしくみが働きますが、極度の発汗や、下痢、嘔吐、出血などで水分が多量に失われると、頭痛や食欲不振、脱力感などの脱水症状が起こります。このような症状を起こさない為に、十分な水分補給が大切なわけです。

最初の1ヶ月間は流動物中心のお食事です。1回量は少ないですから、しっかり意識して摂取していかないと脱水症状を起こしかねません。1日2000ccを目標に摂取して行きましょう!!

貧血

  貧血とは、赤血球中に含まれるヘモグロビンの量が少なくなった状態を言います。このヘモグロビンの構成成分となるのが鉄です。鉄は胃酸により吸収しやすいかたちにかわり、十二指腸や小腸から吸収されます。また、ビタミンB12は葉酸と協力をして骨髄で巨赤芽球から正常な赤血球をつくり出す働きをしています。ビタミンB12の吸収には胃から分泌される内因子と呼ばれるタンパク質の助けが必要です。

つまり、胃切除後はビタミンB12の吸収障害と胃酸の減少の相乗効果により鉄の吸収が障害され貧血症状が現れるわけです。

したがって、貧血を防ぐ為には不足しがちな鉄やビタミンB12などの補給が大切になります。タンパク質やビタミンCも鉄の吸収率を高めるので積極的に摂取しましょう。また、食事で量が摂れないので、サプリメントもしっかり摂取して行きましょう。

 <貧血予防のための食事の工夫>

  • 規則正しい食生活をする

鉄が1回に吸収される量は決まっていて、余分なものは排泄されます。欠食などせず、規則正しく食事を摂りましょう

  • 鉄やビタミンB12を多く含む食品の摂取を心がける
  • 鉄を多く含む食品:
    • 牛・豚・鶏肉のレバー、あさり、かつお等 (ヘム鉄)
    • 大豆製品、ほうれん草、小松菜、ひじき等 (非ヘム鉄)
    • ヘム鉄のほうが体内で吸収されやすいです
  • 食べ合わせで吸収率をアップさせる

タンパク質やビタミンCは鉄の吸収率を高めますし、タンパク質は造血機能にも欠かせません。また、吸収されにくい非ヘム鉄は肉や魚と調理したり、

新鮮な野菜や果物を一緒に摂るように心がけると吸収率がアップします。

  • よく噛んで食べ、胃酸の分泌を良くしましょう

脱毛

   髪の毛は体の一部ですから、栄養が不足したり偏ったりすれば、衰えるのは当然です。髪の毛はケラチンというタンパク質から出来ていますので、タンパク質をしっかり摂取することが大切です。また、血行をよくして脱毛を防ぐビタミンE,Aや血管をしなやかにする、EPA(エイコサペンタエン酸)も積極的に摂取すると良いでしょう!!

青魚は、タンパク質とEPAが同時に摂取出来るので一石二鳥です。術後1ヶ月は流動物中心の食事になりますので、タンパク質が不足しがちです。プロティンを積極的にとりいれ、タンパク質不足を防止しましょう。

筋肉減少

   筋肉や臓器などを構成する主成分はタンパク質で、酵素やホルモン・免疫抗体などの原料にもなっています。タンパク質が不足すると、人体を構成するタンパク質が分解されて不足分を補うため、体力や免疫力が低下し、筋肉も減少してしまいます。

 術後は、食事摂取量が減る為、急激に体重減少が起こりますが、脂肪と共に筋肉も減少してしまうので、初期からタンパク質をしっかり摂取し筋肉を減らさないようにする事が大切です。筋肉が減ると基礎代謝量*も低下し、脂肪が蓄積しやすくなり体重減少が停滞してしまいます!!

 このような悪循環を起さないためには、しっかりタンパク質を摂取すると共に、適度な運動を取り入れ、筋肉量を増やし脂肪を効率よく燃焼することが大切です。

基礎代謝量:睡眠時など体を横にした身体的安静状態でも、呼吸・心拍・体温の維持など、さまざまな生命活動が続いています。このような生きていくために最低限必要な最小のエネルギー代謝量のことを、基礎代謝量といいます。


術後の食事のスケジュール


ステージT
  • 術後翌日からスタート
  • ノンシュガーの飲み物やゼリー・スープ・水などの澄んだ液体のみで、噛む事を必要とする食べ物は摂らないようにして下さい
  • 1回量10ccずつ、3分位あいだをあけてゆっくり飲んで下さい
  • 1日2000ccを目標に摂取しましょう
  • サプリメントは必ず摂りましょう
    • 番茶
    • ティー
    • ハーブティー
    • ビタミンジュース
    • 味噌スープ
    • うすいスープ
    • 100%ジュース
    • 100%ジュースゼリー  など

ステージ U

  • 術後 15日目からスタート
  • ステージTの流動物に半固形物を徐々にプラスして下さい
  • サプリメントは継続してしっかり摂りましょう
  • タンパク質源を意識して摂取して下さい
      • ⇒ 食べ物(豆腐や茶碗蒸しなど)の通りが悪い場合はプロティンを水や味噌スープに溶かしたりして上手に利用しましょう!!
  • 1日2000ccを目標に摂取しましょう
グループ
好ましいもの
注意したいもの
飲み物
水・番茶・ティー・ハーブティー・100%ジュース・ノンシュガー飲料・100%野菜ジュース・トマトジュース

炭酸飲料・砂糖を含む飲み物

穀類
重湯 その他全部
乳製品

無糖ヨーグルト(プレーンヨーグルト)・無調整豆乳・脱脂粉乳(スキムミルク)・アカディ牛乳(乳糖含まず)

牛乳(乳糖を含む物)

タンパク質源
絹豆腐・茶碗蒸し・温泉卵・卵豆腐 その他全部
スープ類
味噌スープ・うすいスープ・すまし汁 その他全部
デザート類
100%ジュースゼリー・シャーベット・ノンシュガーゼリー 砂糖を含む物

ステージ V

  • 術後 1ヶ月後 からスタート
  • 消化しやすいピューレ状の物から徐々に固形物に移行して行きましょう
      • ⇒  自分に合う物を見付けられるよう、色々なものに挑戦して行きましょう!!
  • 1日5〜6回に分けて食べましょう
  • 主食(穀類)+主菜(タンパク質源)+副菜(野菜類)を組み合わせて食べましょう
  • 固形物を流動物で流し込む食べ方は止めましょう
      • ⇒  嘔吐やダンピング症候群の原因になります
  • サプリメントは継続してしっかり摂りましょう
グループ
好ましいもの
注意したいもの
飲み物

水・番茶・ティー・ハーブティー

  100%ジュース・ノンシュガー飲料

  100%野菜ジュース・トマトジュース

炭酸飲料・砂糖を含む飲み物

穀類

重湯・お粥・軟らかいご飯

  トースト・マッシュポテト

  プレーンクラッカー

その他全部
乳製品

無糖ヨーグルト(プレーンヨーグルト)・無調整豆乳・脱脂粉乳(スキムミルク)・アカディ牛乳(乳糖含まず)

牛乳(乳糖を含む物)

タンパク質源

(卵)茶碗蒸し・温泉卵・ポーチドエッグ・スクランブルエッグ

(魚)蒸し魚・煮魚・ツナ缶

(肉)軟らかい牛肉・鶏肉・豚肉

(大豆製品)絹豆腐・卵豆腐・納豆

(その他)プロセスチーズ・カッテージチーズ・カマンベールチーズ

魚フライ

カツ・高脂肪な物

野菜類 
軟らかく茹でた物  繊維の多い物
脂肪

植物油・マーガリン・低脂肪マヨネーズ

動物性脂肪
スープ類

味噌汁・野菜入りスープ・コーンスープ(牛乳無し)

その他全部
デザート類
100%ジュースゼリー・シャーベット・ノンシュガーゼリー 砂糖を含む物

【術式による食事の比較】

 
食事制限+栄養吸収障害
食事制限のみ
 
胃バイパス術

BPD/DS

袖状胃切除術
バンディング術
胃の容量 20cc 100〜150cc 100〜150cc 15〜30cc
最終的な目標摂取量 エネルギー 1200Kcal
タンパク質 80g
エネルギー 1200Kcal
タンパク質 100g
エネルギー 1200Kcal
タンパク質 60g
エネルギー 1200Kcal
タンパク質 60g
注意点 ・1回の食事量が少ない
・分割食(6回食)が必要
・サプリメント摂取必須
・ダンピングを起こしやすい
・食べられる食品が偏りやすい
・吸収障害が大きい
・サプリメント摂取必須
・タンパク質摂取が必要
・脂質摂取によりおならや下痢を引き起こす
・術直後の食事の通りは悪い
・1日3回食を基本とする
・術直後の食事の通りは悪い
・摂取量が増える時期が早い
・時間をかけると量が入る
・1日3回食を基本とする
・カロリーのある液体(飲み物)に注意
・空腹感が一番大きい
・術直後は特に満腹感が得られにくい
・時間をかけると量が入る
・1日3回食を基本とする
・カロリーのある液体(飲み物)に注意
・食事前に水分を摂っておいて、食事中水分は控える
必要なサプリメント マルチビタミン
マルチミネラル
ビタミンB12
マルチビタミン
マルチミネラル
ビタミンB12、A、D、E、K
   
*すべての術式において糖質は体重減少を止めてしまったり、リバウンドの原因になります。
砂糖を含む甘いジュースやアルコールなどの液体は摂りやすいですが注意が必要です。
(特に袖状胃切除術、バンディング術に関しては100%ジュースも注意が必要になります)
できるだけ、糖質よりタンパク質をしっかり摂るようにしましょう。
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