「減量手術」とは

減量手術に伴うリスク

減量手術に伴う危険性について

 減量手術は簡単な手術ではありません。高度肥満症の方に行う手術はたとえ“モウチョウ(虫垂切除術)”や胆嚢摘出術などの一般的に行われる手術であっても、格段に危険性は高くなります。高度肥満症の患者さんは正常体重の患者さんに比して、合併している病気が多くあります。「リスクを伴うことをしっかりご理解いただいた方だけ手術を受けるべき」と考えます。患者さんは術前に担当医とよく相談して、本当に手術を受けるべきなのか、手術が可能かどうか、どの手術が適しているのかをよく考えてみるべきです。減量手術のあとに生じる危険や合併症のリストを掲載します。このリストも完全ではありません。非常にまれに偶発的に生じるものは掲載されていません。必ず術前に減量・糖尿病外科センタースタッフとあなたの固有のリスクがあるかどうか、あなたが受ける手術特有のリスクがあるかどうかを検討してみてください。

術後に起こりえる合併症

 他の手術と同様に、減量手術も術後に起こりえる合併症があります。その主なものを列挙します。

1. 死亡

 0.2〜1%の頻度で起こりえます(熟練した減量外科医・減量外科センターではその頻度がすくなくなることが証明されています。当センタ−のようなCOE認定を受けている施設での手術死亡率は0.1%以下と言われています)

2. 重篤な合併症

1. 外科的なもの
  • 縫合不全(切ったりつないだりした胃や腸にうまくつかないこと)、腹膜炎、腹腔内出血
  • 重度の創感染、創離開、腹壁瘢痕ヘルニア(いずれも腹腔鏡下手術では少なくなります)
  • 術中の脾臓、その他の臓器の損傷
  • 術後腸閉塞(内ヘルニアや癒着による)、吻合部狭窄、胃管狭窄、術後再出血

 上記により再手術が必要となる場合があります

2. 呼吸器に関連するもの
  • 肺炎、無気肺、呼吸不全、肺水腫、肺塞栓(エコノミークラス症候群)
3. 心血管系に関連するもの
  • 心筋梗塞、心不全、不整脈、脳卒中
4. 腎臓・肝臓に関するもの
  • 急性腎不全、肝不全、肝機能障害、横紋筋融解症
5. 精神的なもの
  • 術後うつ状態
6. その他(重症化する可能性もある)
  • 嘔吐や嘔気、食道炎、胸焼け
  • 貧血、低血糖、低ナトリウム血症、低カリウム血症、低血圧
  • 栄養障害 鉄、ビタミン、ミネラルの欠乏、一時的な脱毛
  • 便秘、下痢、放屁、悪臭のあるおならや便、吻合部潰瘍
  • 体重増加、満足できるまで体重が落ちない可能性
  • バンドの胃内への穿通や“ずれ”(バンディング時)、ダンピング症候群、術後皮膚のたるみ など

手術を受けることと受けないことはどちらが危険か?

 手術はある程度の頻度で死亡することがあります。手術が安全で簡単あるとは決して言いません。しかし高度肥満症という病気はほっておくと死んでしまう危険が高い状態です。カナダでの研究では高度肥満症で手術を受けた群と受けなかった群との生存率を比較した論文があります。(Surgery decreases long-term mortality, Mobidity, and Health care use in Morbidly obese patients:Nicolas V. Christou医師らAnnals of Surgery vol. 240 Number3, Sep. 416 - 424) そこではフォローアップ期間(最長5年、平均2.5年)中の死亡率は手術群では0.68%(手術合併症による死亡率0.4%を含む)、非手術群では6.17%でした。この研究のフォローアップ期間は平均2.5年と比較的短いが、その短い期間にも高度肥満症の患者さんは6%以上の率で亡くなる可能性があるわけです。このフォロー期間をもっとも延ばせば、さらに死亡率が上がることは想像に難くないでしょう。手術によって死亡率を9分の1に減らせるため、手術を患者さんに勧める大きな根拠となります。死亡率のみの比較でもこれだけ大きな差が出ました。生活の質の改善まで考えればさらに大きな差が出ることは明らかでしょう。もちろん手術は0.4%程度の確率で死亡することもあります。しかしそれを理解して手術を受けるならば、そのリスクをはるかに上回る利益が得られることが生命予後の面からも証明されました。この論文以外にも多くの論文で、術後の生命予後の改善が証明されています。

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