「減量手術」とは

減量手術の効果

≪海外の報告≫

1. 10年以上の成績、死亡率への影響

 スウェーデンで行われた高度肥満症4000名以上の方の研究で、手術を受けた群と内科的治療をおこなった群とを20年にもわたり経過をおった論文では、長期的には内科的治療群の体重減少はほとんど得られなかったが、手術群は術式による程度の違いはあるが、全ての術式で長期的な体重減少がえられました。すなわち、手術は内科的治療と異なり、長期間の体重減少に効果があるということです。また同じ研究から、手術群の死亡率は、非手術群の死亡率より15年の間で約30%も少なくなることが判っています。

 カナダからの報告では、高度肥満症に対する手術を行うことにより死亡する率を、内科的治療群の9分の1にすることが出来たというデータが示されました。また米国からは胃バイパス術の検討で、死亡率を40%減らし、とりわけ癌による死亡率を60%、心臓疾患によるものを56%、糖尿病によるものを92%減らすと報告されています。

2. 体重減少に関して

 手術の後の体重減少は通常“超過体重減少率”というもので表します。“超過体重減少率“というのは、減量効果を測る指標で、日本人の理想体重であるBMI 22kg/㎡を基準とした時の超過体重(例えば、Aさんが165cmだとすると理想体重が60kgとなります。Aさんの実際の体重が100kgであったとすると、超過体重は100-60=40kgとなります)の何パーセントが治療により減ったか、を表したものです。従って、超過体重40kgのAさんが減量手術を受けたことにより、体重が30kg減った場合、超過体重減少率は30÷40=0.75ですので、超過体重減少率75%となります。

 体重の減少に関して、2万例以上の解析で胃バイパス術の超過体重減量率は61.6%、平均体重減少量は43.5Kg、腹腔鏡下調節性胃バンディング術はそれぞれ47.5%、28.6kgとされています。

 スリーブ状胃切除術に関しての解析では超過体重減少率は55.4%とのことでした。体重減量に関しては胃バイパス術、スリーブ状胃切除術、腹腔鏡下調節性胃バンディング術の順で効果があると考えられます。(海外ではスリーブ・バイパス術は多く行われていないので、スリーブ・バイパス術の効果に関しては後述の≪当院での成績≫をご覧ください。)

超過体重減少率
図 術式別体重減少

3. 合併疾患に対する手術の効果

 術後糖尿病の臨床的治癒(投薬やインスリン等を用いずに、検査値が正常化するもの)および改善率は胃バイパス術でそれぞれ87.3%、93.2%、スリーブ状胃切除術で66,2%、86.9%、腹腔鏡下調節性胃バンディング術で47.9%、80.8%であり、高血圧の治癒、改善率は胃バイパス術で67.5%、87.2%、腹腔鏡下調節性胃バンディング術で43.2%、70.8%、高脂血症の改善率は胃バイパス術で96.9%、腹腔鏡下調節性胃バンディング術で58.9%、睡眠時無呼吸の改善率は胃バイパス術94.8%、腹腔鏡下調節性胃バンディング術68%と報告されています。

術式別の糖尿病改善効果
図 術式別糖尿病寛解率

 また手術により上記以外の肥満関連疾患の治癒・改善率が50~90%になることが示されています。

術後の肥満関連疾患改善率
図 術後の肥満関連疾患改善率(まとめ)

≪当院での成績≫

減量手術の長期成績は施設のフォローアップ体制によって大きく変わります。以下に述べる手術の長期成績はCOEの認定を受けている当センターでの成績であり、手術を受けただけで以下のような良好な結果を得られるわけではないということを最初に記しておきます。

 当院で提供している4種類の術式(腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術、腹腔鏡下調節性胃バンディング術、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術、腹腔鏡下スリーブ・バイパス術)の術後1年目以降5年目までの超過体重減少率の推移を図に示します。

術式別の超過体重減少率
図 術式別の超過体重減少率(当院成績)

 これを見ると、ルーワイ胃バイパス術、スリーブ状胃切除術とスリーブ・バイパス術がほぼ同等、腹腔鏡下調節性胃バンディング術は他の3術式と比較すると、減量効果がやや低い傾向にあります。

 ただし、BMI50以上の超高度肥満に関してはスリーブ状胃切除術単独だと体重減少の効果が少ないことも分かっています。そのため、二期手術を受けることが必要な場合もあります。

 腹腔鏡下調節性胃バンディング術により得られる超過体重減少率は約50%程度ですが、超過体重の50%を減らすことができれば、肥満に起因して生じる合併疾患の多くは大幅な改善が見込めます。腹腔鏡下調節性胃バンディング術は唯一、臓器の切除を伴わない術式で、安全性が高く、患者さんの体に与える負担が最も少ないため、重要な治療オプションの一つと考えています。

 当センターの成績は欧米の成績と比較しても、非常に優れていると言えます。これは手術手技の問題だけではなく、手術を受けられた患者さんを、心理面、栄養面、運動面など、多角的にしっかりと長期的にフォローアップする仕組みが整っているからである、と考えています。肥満症に対する外科治療を成功に導くためにはチーム医療が非常に重要なのです。

 以上、減量手術の減量効果を中心に述べましたが、減量手術は肥満に伴う合併疾患(睡眠時無呼吸症候群、糖尿病、高血圧、脂質異常、関節症、多嚢胞性卵巣症候群など)に対しても優れた効果を有しています。特に、2型糖尿病に対する効果が非常に高いため、糖尿病治療を主たる目的として、当院を受診される患者さんがますます増えています。詳しくは、「糖尿病に対する手術」をご参照ください。

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