よくあるご質問

BMI30以上で、肥満に伴う健康障害(2型糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、高血圧、脂質異常症など)をお持ちの患者さんのうち、内科治療により十分な効果が得られない場合は外科治療の対象となり得ます。年齢は18歳〜65歳前後が目安です。
ただし、BMI 27.5以上で内科治療抵抗性の2型糖尿病をお持ちの方の場合は、所定の適格基準を満たせば臨床研究に参加して頂ける可能性があります

※BMI計算式 : 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
例)身長160㎝、体重70.5㎏であれば、70.5(kg)÷1.6(m)÷1.6(m)=27.5で BMIは27.5となります。

糖尿病性腎症から腎不全、透析治療に至った場合は手術適応にはなりません。
また、腎不全に至らないまでも、高度の腎障害を伴っている場合は、耐術可能かどうかを検査で慎重に判断する必要があります。

高度肥満を併存している1型糖尿病症例に対する減量手術は、海外での症例報告がいくつかありますが、成績が良くないため手術適応にはなりません。

全ての糖尿病に対して有効というわけではありません。
これまでの知見から、肥満を伴わない糖尿病症例や、インスリンを分泌する臓器である膵臓の機能が著しく低下している症例、1型糖尿病、糖尿病の合併症(腎症、網膜症、神経障害、大血管障害など)が著しく進行している症例に対しては有効性が乏しいと考えられます。

肥満症に対する外科治療は米国では1950年台から、日本では1982年から、当チームも2002年からこの治療を行っています。2008年のデータで、世界で約34万件、北米で約23万件(これは北米における乳がんの手術件数よりも多い数です)もの外科治療が行われており13)、臨床効果、長期予後、安全性に関しても多くの科学的なデータがある、十分に確立された治療と言えます。

高度肥満症に対する外科治療(減量手術)は、欧米では確立されており、NIH(米国国立衛生研究所)は1991年“唯一、外科治療のみが、高度肥満症例に対して長期にわたる減量効果の維持が期待できる治療である”と声明を発表しています3)
また、2型糖尿病に対する外科治療に関しても、内科治療と外科治療とを比較したランダム化比較試験4,5,6)を含めて、すでに多くの科学的根拠が立証されています。ADA(米国糖尿病協会)が、2009年のClinical Practice Recomendationにおいては、内科治療が奏功しないBMI 35kg/㎡以上の2型糖尿病症例に対しては外科治療を考慮するべきである、と述べています7)。IDF(国際糖尿病連盟)も、2011年に、①BMI 35kg/㎡以上の2型糖尿病症例に対する外科治療は妥当、②BMI 30-35kg/㎡の2型糖尿病症例に対しては、内科治療でコントロール不良の場合は考慮されるべき、③人種によるリスクを考慮すると、アジア人ではBMIの基準を(欧米人の基準である①②と比較して)2.5kg/㎡ずつ下げられる可能性がある、と報告されています8)

糖尿病は、「インスリン作用の不足による慢性高血糖を主徴とし、種々の特徴的な代謝異常を伴う疾患群」と、定義されています。インスリンは、血糖値を下げる働きをするホルモンで、膵臓で分泌されます。インスリン作用の不足とは、①血糖値を下げるために、必要なだけのインスリンが分泌されない、もしくは、②インスリンは分泌されているが効きが悪い場合に生じます。
減量手術により肥満が改善されると、インスリン抵抗性が改善され、インスリンの効きが良くなるため、糖尿病は改善する方向に向かいます。さらに、特にバイパスを含む手術後には、膵臓でのインスリン分泌を促す消化管ホルモンが分泌されるようになります。すなわち、手術後にはインスリンが効きやすくなるとともに、インスリンの分泌も改善するため、高い抗糖尿病効果が得られると考えられます16,17)。“糖尿病に対する手術”もご参照ください。

当院で腹腔鏡下スリーブ・バイパス術が行われた日本人糖尿病患者さん81名(注:2007年4月〜2012年5月までのデータ。2012年6月まとめ)では、83%の患者さんで、糖尿病の臨床的寛解(=糖尿病に対する薬剤投与が不要で、HbA1c値や血糖値などの血液データが正常値化した状態)が得られました。残りの17%の患者さんについても、投薬量が減る、血液データが改善する、など有意な改善が得られました。ほぼ全ての患者さんで、インスリン治療から離脱することが可能でした。

胃がんに対して、胃を切除し小腸をバイパスしてつなぐ同様の手術が行われる場合があります(胃切除+ルーワイ再建)が、必ずしも糖尿病が良くなるとは限らないことが分かっています。
いくつかの理由が考えられますが、一つには、胃がんの手術を受けられる患者さんの多くが肥満を合併していないこと、さらに、胃がんに対する手術と肥満症に対するバイパス手術とではバイパスされる小腸の長さが全く異なっていること、などが挙げられます。

2型糖尿病に対する治療効果に関しては、長期効果を示す論文が発表されています。
腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術後では、Higaらの報告では糖尿病の寛解率は2年で83%、10年で67%であり10)、Porieらの報告では最長14年、平均7.8年のフォローで糖尿病は80%、糖尿病予備軍(IGT)では、152人中150人が正常血糖値になったと報告されています11)。Sugermanらは術後1年で83%、5-7年で86%の寛解率と報告しています。一方、スウェーデンのSOS studyでは、外科治療を受けられた方が、新規に糖尿病を発症するリスクは、手術を受けなかった同程度の肥満者と比較して、2年で86%、10年で75%低かった、と報告されています12)

減量手術により、2型糖尿病の寛解(かんかい)状態が得られた後、再び再然することもありますが多くの場合は、長期経過後の体重再増加(リバウンド)によるものです。
外科治療は、内科治療や他のダイエットと比較しても、リバウンドを起こしにくい治療ではありますが、体重維持のためには専門スタッフによる総合的なサポートが非常に重要です。当院では、医師だけでなく、肥満症外科治療の経験が豊富な多くのスタッフが患者さんの治療にあたっています。

バイパス手術(腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術、腹腔鏡下スリーブ・バイパス術)では、小腸をバイパスすることにより、食物ならびに消化液の流れるルートを変えますが、小腸そのものは切除しません。
詳しくは、“減量外科手術術式比較”をご覧ください。

元に戻せる手術もあります。
減量手術には複数の術式があります。腹腔鏡下調節性胃バンディング術(gastric banding)では、バンドを取り外すことで元の状態に戻すことができます。腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術(Roux-en-Y gastric bypass)では、摘出される臓器がないため、一般的ではありませんが、元の状態に戻すことは可能です。腹腔鏡下袖(スリーブ)状胃切除術(sleeve gastrectomy)ならびに腹腔鏡下スリーブ・バイパス術では、手術時に胃の外側を切除し、摘出するため、元の状態に戻すことはできません。

他の外科手術同様、減量手術にもリスクがあります。
減量手術を受けることによる死亡リスク(死亡率)は一般に0.5-1.0%程度と報告されています1)。減量手術が広く行われている米国では、第三者機関が査察を行い、手術件数が多く、安全に治療が行われている病院をCOE(Center of Excellence:卓越した拠点)として認定しています。当院は日本で唯一、COE認定を取得しています。米国のCOE認定施設のみのデータでは、死亡率は0.13%でした2)。0.13%は胆石に対して行われる腹腔鏡下胆のう摘出術と同程度です。
詳しくは、“減量手術に伴うリスク”“減量手術の安全性について”をご覧ください。

胃がんや大腸がんなど消化器系の手術に共通する合併症と、肥満患者さんの手術特有の合併症があります。詳しくは、“減量手術に伴うリスク”をご覧ください。

逆流性食道炎は肥満との関連が深い疾患です。
これは蓄積した内蔵脂肪によって腹圧が上昇するためと考えられます。従って、減量手術によって体重が落ちると、逆流性食道炎が改善する、という現象はしばしば認められます。一方、手術の方法によっては、手術自体により食道と胃のつなぎ目にある逆流防止機構が影響を受け、術後に逆流性食道炎が増悪する場合があります。その場合も、大部分の患者さんで内科治療(胃酸分泌を抑える内服薬)により症状をコントロールすることが可能です。

減量手術により、免疫システムが障害され、自己免疫疾患や感染症にかかりやすくなった、というエビデンスは現在のところありません。外科治療により、高度肥満者の生命予後が改善することはいくつかの論文で示されており、Admasらの報告によると、対照群(外科治療が行われず、内科治療が継続された高度肥満者)と比較して、全体の死亡率を40%、心血管疾患による死亡率を56%、糖尿病による死亡率を92%、癌による死亡率を60%低下したことを報告しています14)。手術による減量と免疫システムとの関連を考察した論文15)によると、十分なデータは揃っていないものの、手術はリンパ球の一つであるNK細胞の機能を活性化し、心血管疾患や癌の発生を抑えるのに寄与している可能性がある、と考察しており、むしろ、免疫システムに好ましい影響を与える可能性がある、と考えられます。

胃が小さくなると、食事量は少なくなりますが必要な栄養素が効率良く摂れるように工夫をすることで、栄養失調になることはありません。術後には不足しがちな栄養素をサプリメントで摂っていただく必要があります。詳しくは、“栄養について”をご覧ください。

手術直後は一度に10cc程度ずつ、ゆっくりと水分を摂る様にご指導させて頂いています。その後は、徐々に食べられる量が増えてきます。詳しくは、“栄養について”をご覧ください。

術後1ヶ月間は流動食になりますので、普通の食事をすることはできません。しかし手術後1ヶ月以降から、少量ずつ普通食を摂れるようになります。最初は食べにくい食品がある方がいらっしゃいますが、半年〜1年で何でも食べられるようになります。詳しくは、“栄養について”をご覧ください。

術後1ヶ月は食べられるものが限られるので、外食は難しいことが多いです。術後1ヶ月以降、少量であれば何でも食べられるので、術後外食や会食を楽しんでいる方はたくさんいらっしゃいます。しかし、術後半年は禁酒が必要です。

一度に多くの量を食べることはできなくなりますが、少量の食事で満足できるようになりますので、食事の量より質を楽しむことができるようになります。

術後1-3ヶ月の、(胃を切除したことで)摂取可能な食事量が少なくなってしまう時期に、必要なだけの水分が摂れないと脱水症状をきたす可能性があります。そのため、手術を受けられた患者さんには、意識して水分を多く摂って頂くよう(目安としては、1日1.5-2リットル程度)、ご指導させて頂いています。脱水症状が起きた場合、熱中症による脱水などと同様、一時的な点滴投与などで状態の改善が得られることが大部分です。

一時的に脱毛が起こることがあります。
術後3-6ヶ月が起こりやすい時期で、その後、もとの状態に戻ります。

当院での減量手術は、原則的に腹腔鏡(ふくくうきょう)を用いて行います。入院期間は通常、術後3日間程度です。術後経過にもよりますし、個人差(体力や仕事の種類、職場や家庭環境など)が大きいため、一概には言えませんが、退院されてから、平均1週間程度で社会復帰されている方が多い様です。開腹手術は体にかかる負担が大きく、社会復帰により時間がかかると考えられます。

減量手術は保険診療の対象外(自費診療)となります。詳しくは、“手術費用”をご覧ください。

肥満症ならびに糖尿病に対する外科治療は、国内において、一般診療として広く行うまでには十分に認知され、普及しているとは言えない状況です。一部の術式のみが保険診療として行われる場合もありますが、一つの術式のみですべての患者さんに対応できるわけはなく、また保険診療できめられた治療の範囲内では、この治療に必要と認定されている治療、ケア、サポート、安全な設備の充実などをおこなうことができません。そのため当センターでは最高の医療を行うために健康保険は適応となっていません。

手術前の不安や手術後に直面する様々な悩みに対応するために、当院では、サポートグループという患者会を定期的に行っています。手術前から手術後の長期に渡って、患者さんをフォローする体制が整っていますのでご安心ください。

治療満足度に関するアンケート調査を実施したところ、ほぼ全ての患者さんが、治療を受けたことに対して“良かった”、“とても良かった”と回答されています。また、生活の質(Quality of Life)評価においても、治療前と比較して、大幅な改善が得られています。

ご家族の賛成が得られない場合は、原則的に治療をお断りしています。
理由として、ご家族をはじめとした周囲の協力体制が得られない状態では、治療効果が得られにくいと考えているからです。肥満症は周囲からの協力が必要な難治性疾患です。患者さんはもちろん、最も身近な存在である、ご家族の方にも一緒に、減量し健康状態を改善することに取り組んで頂きたいと考えています。

こうすればよい、という解決方法はありません。治療をお受けになられた患者さんには、同様の悩みを持った方がたくさんいらっしゃいます。当院では術前・術後の患者さんが集まって様々な話をするサポートグループ(患者会)をひらいています。どうするのが良いか、みんなで一緒に考えましょう。

<参考文献>

1)Buchwald H, et al: Trends in mortality in bariatric surgery: a systematic review and meta-analysis. Surgery 2007

2)DeMaria EJ, et al: Baseline data from American Society for Metabolic and Bariatric Surgery-designated Bariatric Surgery Center of Excellence using the Bariatric Outcomes Longitudinal Database. Surg Obes Relat Dis 2010

3)Gatrointestinal surgery for severe obesity. National Institute of Health Consensus Development Conference Draft Statement. Obes Surg 1991

4)Dixon JB, et al: Adjustable gastric banding and conventional therapy for type 2 diabetes: A randomized controlled trial. JAMA 2008

5)Schauer PR, et al: Bariatric surgery versus intensive medical therapy in obese patients with diabetes. N Eng J Med 2012

6)Mingrone G, et al: Bariatric surgery versus conventional medical therapy for type 2 diabetes. N Eng J Med 2012

7)American Diabetes Association: Standards of medical care in diabetes-2009. Diabetes Care 2009

8)Bariatric Surgical and Procedural Interventions in the Treatment of Obese Patients with Type 2 Diabetes. A position statement from the International Diabetes Federation Taskforce on Epidemiology and Prevention. International Diabetes Federation 2011

9)Laferrere B, et al: Effect of weight loss by gastric bypass surgery versus hypocaloric diet on glucose and incretin levels in patients with type 2 diabetes. J Clin Endocrinol Metab 2008

10)Higa K, et al: Laparoscopic Roux-en-Y gastric bypass: 10-year follow-up. Surg Obes Relat Dis 2011

11)Pories WJ, et al: Who would have thought it? An operation proves to be the most effective therapy for adult-onset diabetes mellitus. Ann Surg 1995

12)Carlsson LM, et al: Bariatric surgery and prevention of type 2 diabetes in Swedish obese subjects. N Engl J Med 2012

13)Buchwald H, et al: Metabolic/bariatric surgery worldwide 2008. Obes Surg 2009

14)Admas TD, et al: Long-term mortality after gastric bypass. N Eng J Med 2007

15)Moulin CM, et al: Effect of surgery-induced weight loss on immune function. Expert Rev. Gastroenterol. Hepatol 2008

16)関 洋介、笠間和典:肥満症の外科療法.診断と治療2012

17)関 洋介、笠間和典:減量手術とインクレチン.月刊糖尿病2012

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