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>HOME >手術実績>患者様の手記 患者様の手記胃バイパス手術から1年 (30代 女性)手術から1年。振り返ると、この1年はまさにセルフ・リフォームの年になったとつくづく思う。「セルフ・リフォーム」なんて言葉が世の中にあるのかどうかは知らないけれど。なんとなく意味はご理解いただけよう。 このセルフ・リフォームなるもの、かなりの苦痛を伴う。言葉を飾らずに言うと、長い年月をかけて己の身に纏ってきた脂肪を1枚1枚剥ぎ取るのだから。しかも、手術を受ける程までに太ってしまった元凶である己の性格やら周囲の環境やらも含めて全てを再構築するのである。これを大変と言わずして何をか言わんや。 手術自体は無痛だ。先生や病院のスタッフが細心の注意を払って肉体的な負担を最小限にしてくださっている。問題は精神的なものである。 術後の流れを見ていただくと、最初の1ヶ月は大幅に食べられるものが制限される。病院にいる間は、未来の自分への希望や、手術を受けて生まれ変わるんだ!という決意がまだ続いている上に、先生やスタッフの励ましがあるので、特に辛い思いをすることはないだろう。 問題は退院した後なのだ。ここからは身近な支えがないとかなり辛い。周りは普通に食べているのに、自分は食べられない。物理的に胃が小さくなったと頭では理解している。してはいるのだけれども、脳はそう簡単にはリセットできないのだ。今まで培ってきた、まるで飢餓地獄に落とされた餓鬼のような脳は「食べ物をよこせ」と絶えず要求してくる。今まで、何年も何十年も、その要求があると(あるいは、要求がなくても)即座に応えていただけに、無視をするとますます脳はサイレンを大きくする。常に頭の中で食べ物がグルグル回っている状態。まさに飢餓地獄に落とされた餓鬼になってしまったのだ。 ただし、餓鬼と違う点は、食べたければ食べられる状態に置かれているという部分である。食べ物を口にしようとした途端に、金棒を持った全身赤やら青い色の恐ろしい鬼に追いかけられることもない。唇を針と糸で縫われて開けられない状態にもなければ、お金さえあれば食べ物が手に入らない状態でもない。 しかし、それでも、餓鬼はやはり餓鬼なのだ。運命はそう簡単には変わらないのである。そう。目には見えなくても、確実に金棒を持った恐ろしい鬼は存在する。私やあなたの内側に潜み、出番を待ちかまえているのだ。 もし、手術後のあなたが今まで通り脳の命令に素直に従って食物を貪ったとしよう。その途端に奴らはやってくる、カッカと高笑いしながら。嘔吐やダンピング症状という形をとって。 幸い、私の場合は、嘔吐鬼には何度も遭ったものの、ダンピング鬼との遭遇はほとんど経験がないのでリアルにお伝えすることはできない。が、聞いたところによると、「チョコレートをほんのちょっと舐めたら数時間倒れて動けなかった」などの事例もあるらしい。誠に恐ろしい鬼です。お気をつけください。 何度吐いても懲りない私の脳は、どこにいても何をしていても食べ物に関することを考えている。これは1年経った今もだが、朝、会社のデスクについて一番にすることは何よりも「食べられそうなもの」をインターネットで探すことだ。先述通り、ステージVにくるまでは食べられるものにかなりの制限がある。その制限範囲内で少しでも美味しそうなものを探すのだ。カロリー制限がある病人用の低カロリー果汁ゼリーだって探せばいろんなメーカーから何種類も売っている。アイスクリームだって80キロカロリーのものが普通のコンビニやスーパーで売ってる時代だ。 「こういうモノがないか?」とインターネットで検索すれば、ほとんどの場合、「ありますよー」という返事が返ってくる。あらゆるものが流通しているので、ぜひぜひご活用されることをお奨めする。特に病人食を扱っているサイトは必見だ。
恐らく、これを読まれている方は既に術前・術後の流れは知っておられるだろう。だいたい最初の3ヶ月で体重は激減する。それに従って、体のサイズも変わる。周りの目も変わる。
周りの目に関しては、その人の環境によるから一概には言えないが。私の場合、毎日、顔を合わせる同僚にはほとんど変化はわからなかったようだ。最初の1ヶ月に「ちょっと痩せた?」と言われた程度。まぁ、うちの職場は30代から50代の女性しかいない空間なので、その中の一人だけが急に痩せたりすると嫉妬が渦巻き、絶対に意地でも認めるものかっていう心理になるせいかもしれない。
このようにちょっと特殊な環境にいるので、誰も口に出して「痩せたね」と言ってくれず、仕方なくまん丸だった自分の顔が徐々にシャープになっていくのを鏡で見たり、服のサイズが徐々に小さくなっていくことで痩せてきたなぁと実感しては、隠れたところで喜んでいた。そんな自分が可愛いと思う。1ヶ月後の検診の時に、笠間先生に「毎朝あごがシャープになっていくのを見てはニヤニヤしてます」なんて言ったことを覚えている。
あれから1年。一番変わったのは容姿ではなく、私の生活態度かもしれない。ずっと培ってきた「できるだけ美味しいものを食べたい!」という欲望のベクトルが、大きさはそのままに、しかし、その方向だけを「美味しいものを買って食べる/食べに行く」から「自炊する」という方向へと転換したのだ。恥ずかしながら、包丁なんかほとんど持ったことのなかったこの私が、である。
手術を受けた人の中には、お肉が全く駄目になった人もいるようだが、私はそんなことはなかった。今でも肉類は大好きだ。ただし、なるべく鶏肉にしてみたり、どうしても牛肉が食べたい時はできるだけ脂身の少ない部分を買ったり、下茹でするなどの調理方法でも工夫するし、量も少なめにはしている。
この手記の一番最初に「セルフ・リフォーム」は辛くて苦しいものだと書いたが、それだけではない。矛盾しているようだが、実に楽しく1年間を過ごせたように思う。 |
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